「インプラント治療は完了までに何度も通院しなければならない」というイメージを持つ方は少なくありません。仕事や家事の合間に歯科医院へ何度も足を運ぶのは負担が大きい、と感じている方も多いのではないでしょうか。実は条件が整えば、抜歯した当日に仮歯を装着できる「即時荷重」という方法があります。今回は、この即時荷重がどのような治療法で、どのような条件のときに選択できるのかを、専門医の視点から解説します。
即時荷重は骨結合の完成を待たず当日に仮歯を入れる方法です

即時荷重とは、インプラント体を顎の骨に埋め込んだ当日、または短期間のうちに人工歯(仮歯)を装着し、噛む機能を持たせる荷重方法のことです。従来は骨とインプラントがしっかり結合するまで数か月間、噛む力をかけずに待つのが基本とされてきました。
オッセオインテグレーションには通常2〜6か月の期間が必要です
インプラント体と顎の骨が結合する現象を「オッセオインテグレーション」と呼びます。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、インプラントについて日本口腔インプラント学会の情報を参照する形で解説されています[1]。この骨結合の完成には一定の治癒期間が必要であり、その間に無理な力がかかると結合が妨げられるリスクがあります。
即時荷重は埋入トルク値やISQ値で結合の強さを確認します
即時荷重を行うかどうかは、感覚的な判断ではなく数値による評価が基本です。埋入時のトルク値(インプラントをねじ込む際の抵抗の強さ)や、共振周波数解析によるインプラント安定指数(ISQ値)を測定し、初期固定が十分かどうかを確認したうえで判断します。学会誌でも、荷重プロトコルの選択には科学的根拠が求められると指摘されています[3]。
即時修復・早期荷重・通常荷重との違いを整理します
荷重の名称は開始タイミングによって分けられます。それぞれの違いを整理すると、以下のようになります。
| 荷重の種類 | 荷重開始のタイミング |
|---|---|
| 即時修復 | 埋入と同時、咬合接触のない仮歯を装着 |
| 即時荷重 | 埋入と同時〜48時間以内に咬合力をかける |
| 早期荷重 | 埋入後48時間〜3か月以内 |
| 通常荷重 | 埋入後3〜6か月以上経過後 |
当院では日本口腔インプラント学会専門医の院長が、シロナ社製CT・セファロによる3D画像診断で骨の量と密度を確認し、どの荷重プロトコルが適しているかを個別に判断しています。
抜歯当日の仮歯装着は初期固定が十分なら可能です

抜歯当日に仮歯を入れるには、単に「即時荷重」を選ぶだけでなく、抜歯した歯の穴(抜歯窩)にそのままインプラントを埋入する「抜歯即時埋入」との組み合わせを検討する必要があります。この二つは別の判断基準を持つため、両方の条件が整うことが前提になります。
抜歯即時埋入と即時荷重は別の判断が必要です
抜歯窩にインプラントを埋入する場合、インプラントと既存骨との接触が根尖側(歯根の先端側)に限られやすく、頸部(首の部分)に骨とのすき間が生じやすい傾向があります。良質な初期固定を得るには、埋入位置や角度を精密にコントロールする手術技術が必要です。当院ではシロナ社製CT・セファロによる3D画像診断で埋入位置を精密にシミュレーションし、精度を高める体制を整えています。
前歯部は審美的な要求が高く即時荷重の適応になりやすい部位です
見た目への影響が大きい前歯部では、患者さまの審美的な希望から即時荷重が検討されやすい傾向があります。ただし唇側(口唇に近い側)に十分な高さの骨が残っていることが前提となるため、事前の骨評価が欠かせません。手術当日の流れについては、インプラント手術の流れって複雑?専門医が分かりやすく手順を紹介でも詳しく紹介しています。
当院ではCTとマイクロスコープで初期固定を事前に確認します
当院では全チェアに設置したマイクロスコープ(肉眼の約20倍まで拡大可能)と、シロナ社製CT・セファロによる画像診断を組み合わせ、骨質・骨量・神経や血管の位置関係を把握したうえで、即時荷重が可能かどうかを判断しています。診断の精密さがそのままリスク低減につながることは、インプラント治療の安全性は大丈夫?CT診断と精密治療への取り組みでも解説しています。
即時荷重の適応は骨量・埋入トルク・咬合の条件で判断します
即時荷重は誰にでも選択できる方法ではありません。骨の状態、埋入時の初期固定の強さ、そして噛み合わせの力という複数の条件を満たす場合に限って検討されます。
骨量と骨密度が十分でなければ即時荷重は見送ります
骨が薄い、または骨密度が低い部位では初期固定が得られにくく、無理に荷重をかけると結合が不安定になる可能性があります。学会誌の研究でも、荷重の負荷により骨量の変化がもたらされるとともに、骨質が荷重方向に相関して適応変化することが見いだされたと報告されており、骨質の評価は荷重時期を決めるうえで重要な要素とされています[2]。
埋入トルク値を目安に初期固定を確認します
埋入時に得られるトルク値が一定の水準に達しているかどうかは、即時荷重の可否を左右する重要な指標です。日本口腔インプラント学会が発行する口腔インプラント治療指針2024では、埋入時期・荷重時期が独立した章として扱われるなど、治療手順や画像診断、治療計画に関する内容が体系的にまとめられています[4]。当院では専門医がこの指針を踏まえたうえで、個々の症例に応じた判断を行っています。
咬合力が強い部位や歯ぎしりがある場合は慎重に判断します
奥歯など強い咬合力がかかる部位、または歯ぎしり・食いしばりの習癖がある方は、即時荷重によって過度な力がインプラントに加わるリスクを考慮する必要があります。こうしたケースでは通常荷重や早期荷重を選択したほうが、長期的な安定につながる場合もあります。適応の判断には専門的な知識が求められるため、インプラント専門医って何が違う?資格の意味と技術力を解説も参考にしてください。
即時荷重を選ぶと通院回数と治療期間はどう変わりますか
即時荷重が適応できる場合、通常より通院回数を抑えられる可能性があります。ただしすべての症例で治療期間が短縮されるわけではなく、骨造成が必要なケースなどでは通常荷重と同程度の期間がかかることもあります。
通常の荷重プロトコルでは仮歯装着まで数か月の通院が必要です
一般的なインプラント治療では、埋入手術後にオッセオインテグレーションの完成を確認してから補綴(かぶせ物)の型取りを行うため、仮歯や最終的な歯が入るまでに複数回の通院が発生します。通院回数の目安についてはインプラント治療にはどのくらい期間がかかる?通院回数の目安で詳しく説明しています。
即時荷重が適応できれば通院回数を抑えられる可能性があります
抜歯・埋入・仮歯装着を同日に行えれば、その分の通院を一度に済ませることができます。ただし最終的な補綴物への交換や、定期的なメンテナンスの通院は別途必要になるため、通院回数がゼロになるわけではない点に留意が必要です。
費用や通院回数の目安は事前のCT診断で個別に説明します
即時荷重の適応可否や治療期間は、骨の状態によって一人ひとり異なります。当院ではCT診断の結果をもとに、通院回数の見通しや費用の目安をカウンセリングルームで個別にご説明しています。費用の内訳についてはインプラント治療はいくらかかる?費用の内訳と支払い方法を解説もご参照ください。
まとめ
- 即時荷重は骨結合の完成を待たずに当日仮歯を装着する荷重方法で、埋入トルク値やISQ値による初期固定の確認が前提になります
- 抜歯当日の仮歯装着には「抜歯即時埋入」との組み合わせが必要で、唇側の骨の高さなど部位ごとの条件を満たす必要があります
- 適応の判断は骨量・骨密度・埋入トルク・咬合力といった複数条件を踏まえて行われ、学会の治療指針でも荷重時期は重要な章として扱われています
- 当院ではCT・セファロによる3D画像診断とマイクロスコープを用いて、個々の骨の状態を精密に評価したうえで即時荷重の可否を判断しています
- 即時荷重が適応できれば通院回数を抑えられる可能性がありますが、最終補綴やメンテナンスの通院は別途必要です
通院回数をできるだけ抑えたい方は、即時荷重が適応できるかCT診断でご確認ください。プライム総合歯科クリニック(香川県高松市多肥上町字松林1292-1、087-813-8955)では、日本口腔インプラント学会専門医が骨の状態を精密に評価し、個々に合った治療計画をご提案しています。24時間WEB予約にも対応していますので、まずは初めての方へ(初診の流れ)をご確認のうえ、お気軽にご相談ください。
参考文献
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「インプラント」kennet.mhlw.go.jp
[2] 日本口腔インプラント学会誌「インプラント周囲骨のメカノバイオロジー」jstage.jst.go.jp
[3] 日本口腔インプラント学会誌 第28巻1号 jstage.jst.go.jp
[4] 日本口腔インプラント学会「出版物(治療指針・用語集 他)」shika-implant.org